文字数: 73,568

Viva La Vida/美しき生命



「寒い……」

 自分の呟きで目が覚めた。震える声と共に吐き出された息で視界が白く曇る。寒さの次に感じたのは痛みだ。バーナビーは眠っていたが、現在体を横たえている場所は見慣れたベッドではなく、しばしば不精してそのまま眠ってしまうリクライニングチェアですらない。ごつごつとした岩肌の感触が頬や肩、腹のあたりに感じられる。鈍い痛みを引きずりつつわずかに目を上げた。黒い縦縞は牢の格子だろうか。眼鏡をかけたまま横になっているため、レンズがずれていて視界がぼやけている。ほんの小さな明かりが遠くで揺らぐ。蝋の匂いがわずかに鼻先に触れた。

「なんだ、ここ……」

 半身をゆっくりと起こし、下半身を引きずるようにして鉄格子に背を預ける。眼鏡の位置を修正し、正面の壁に掛かった燭台の光を頼りに状況把握に努めた。身に覚えの無い痣が数箇所、後頭部にこぶがひとつ。どうやら何者に後方から襲撃されたらしい。意識を失う以前の記憶を辿ろうとしたところで、耳が人の気配を拾った。複数――足音からすれば、三人。

「居たわ、こっちよ!」
「早く、スカイハイ!」

 鉄格子の向こうにある階段から降りてきたのは、二つの見知った顔だ。一人はブロンドをグレーのベールで隠しており、一目で修道女と分かる服を着込んでいる。もう一人も同様にベールを被り、長いワンピースの裾を引きずっているが、こちらは上背と体格が咄嗟の判断を阻んでいた。が、恐らくこちらも修道女なのだろう。カリーナの口から発せられた名を聞いた瞬間、バーナビーは思考を組み上げる努力を一瞬で放棄した。

「離れて!」

 切迫した表情のカリーナが鋭く囁くので、大人しく言葉に従い鉄格子から離れる。瞳には青い光が灯っており、彼女が触れた鉄格子は瞬く間に氷漬けにされてしまった。修道女たちから遅れてまた一人階段から登場人物が増える。今更その名を呼ぶ気も起きない。黒いキャソックを纏った男が労わるような目で即席の氷柱に触れた。ロザリオに繋がれた十字架が鉄格子に触れ、高い音を立てる。

「バーナビー君、私だ。分かるかい?」
「……また貴方ですか」
「すまない。そしてすまない」

 バーナビーの言葉を受けてキースの眉尻が情けなく下がった。それにしても本当に、忌々しいぐらい質感のある夢だ。バーナビーが眠っていようが眠っていまいが、夢の時間には何の影響も与えていないかのような錯覚すら覚えてしまいそうだ。これはバーナビーの夢でしかないのに。

「あら、知り合いかしら?」
「今は悠長に話している暇は無さそうだ」
「もう凍らせてる!」
「ああ、ありがとう。そしてありがとう!」

 キースが手のひらを上下させるので、その動きに従って身を伏せる。力の篭もった掛け声と共に鉄格子の数本が綺麗に外れた。凍らせて脆くなった格子を風の刃で切断したのだろう。最早用を成さなくなった牢獄の向こうから、蝋燭の淡い光を湛えた手のひらが差し出される。

「手を取ってくれ。お願いだ。……今だけでいい」

 夢の登場人物の一人でありながら、我が物顔でイニシアチブを握っておいて、どうしてそんな顔をするのだろうと思った。
 どうせなら能天気に笑っていればいいのに。

 どこからか響くあどけない声が束になり、暖かい空気に透き通って聖歌を結ぶ。ニーチェの言うように早々に神を殺してしまったバーナビーでも、その旋律には不気味な畏敬の圧力を覚える。

 座るように勧められたのは、布張りの大きな椅子だ。古い物のようだが、暖炉の前に置かれているだけで王座にも匹敵する居心地を発揮している。無論、比喩を除けば王座になど座ったことも無いけれど。座ってみれば案外、座り心地が悪いものかもしれないな。

「んまー見れば見るほどハンサムじゃなぁーい?」

 手狭な部屋はキースの私室だと言うが、ネイサンとカリーナもこの場に留まっている。やはりバーナビーとは面識が無いことになっているらしく、ネイサンは無用に接近してバーナビーをしげしげ眺めつつ毛布を押し付けてきている。対するカリーナは一貫して不機嫌な視線を目端から送っているのみだ。

「今度は神父……ですか?」

 バーナビーが投獄されていたのは古びた石造りの小屋の地下牢だった。キースが言うには町の集会場らしい。罪人は町で裁判が行われるまであの地下牢に拘留されるのだ。一体バーナビーが何の法に触れたと言うのだろう。相棒の過剰なヒーロー活動の賠償の話なら本社を通してほしいところだ。ひとつため息を吐き出す。夢の中の胸中で皮肉を言ったって自虐でしかない。

 逃亡を想定していない牢獄から易々逃れ、移動したのはこの古ぼけた教会だった。広さはあるが、補修が追いついていない貧相さばかりが目に付く。この部屋も天井には雨漏りの痕が奇妙な紋様として描かれており、暖炉から少し離れれば隙間風が肌を刺す。寒さを凌ぐように腕と手のひらを擦り合わせつつ、キースは物憂げにうつむいた。

「陛下が新しい女王陛下のために教皇聖下と袂を別ってから……この国はすっかりおかしくなってしまった。すっかりね。陛下は神のものを神の下でなく陛下にお返しせよと言う……実に奇妙なことだ。実に」
「……なるほど?」

 この夢は16世紀のイギリスが舞台のようだ。それならば、このすっかり荒廃した修道院にも納得がいく。ふと胸中に既視感がちらついたが、そのあまりに漠然とした閃きは一瞬で光を失ってしまった。

「アンタ……助けてもらってお礼もないわけ?」

 氷のごとく冷えた声がバーナビーの足下にまで這って来た。暖炉の火から目を動かせば、苛立ちを隠さないしかめ面と見詰め合うことになる。

「礼が欲しくて助けてくれたわけか。これは随分荒っぽい聖職者ですね」
「何、それ?私だって別に、好きでこんなカッコしてここに居るわけじゃ……っ!」
「ブルーローズ」

 ネイサンの声音は穏やかだったが、その奥には咎める色が潜められている。咄嗟に反論しようとしたブルーローズは、ネイサンの視線に従いキースの苦笑を目にして、やがてばつの悪そうな顔でうつむいた。

「彼女たちは実は……シスターではないんだ。一時的にこの教会に身を置いている。他の町や村……家族の居る故郷から逃れてね」
「ここにはアタシたちみたいなのが大勢居るの。みんなスカイハイに助けられたのよ」

 聞くのも飽き飽きするようないつも通りの粗筋だ。元よりそんな素質は自分に期待していないが、バーナビーは脚本の才能には恵まれていないらしい。黙り込んだバーナビーなどまるで無視して、キースの話は続く。

「NEXT差別が魔女狩りと繋がってしまっているようだ。君も……あのままあそこに居ればどうなっていたか……」
「そんなはずはない!NEXTが現れたのはこの何十年の……」
「君はここがどこか、気づいていないのかい?」

 キースはバーナビーの言葉を遮ってまたも苦笑を浮かべた。そうだ、ここは夢だ。整合性を求めても仕方がない。だがそれを夢の登場人物に指摘されるとなんとも腹立たしい。思わず立ち上がって文句の一つでも付けてやろうとしたが、何を察知したのかネイサンに両肩を押さえられてしまった。

「あんなところに放り込まれていたんだ。ゆっくり体を休めてこの先のことを考えたまえ。君の前途にも主の愛と祝福があらんことを」

 キースは夕べの祈りがまだだと言い、白いローブと十字の織り込まれた赤いストールを手早く身につけて部屋を出て行った。コートのような白いヒーロースーツを見慣れているせいなのか、奇妙なほどその服装は彼に似合っている。

「呑気なものだな……」

 十字軍と戦い名誉の負傷をした人間と同じ人間の発言とは思えない。いや、本当に同じではないのかもしれない。彼はただバーナビーの記憶にある名を借りた夢の登場人物で、毎度毎度目の前で命を落としてしまうのだから。

「なんでアンタってそんなに感じ悪いの?スカイハイがアンタに何したって言うのよ」

 カリーナは未だにバーナビーに対する不満を燻らせているようだ。最早夢で会話を成立させる空疎にも慣れ切った。首をひとつ横に振ってやる。

「彼が本当に祈るべき相手を見誤っているからですよ」
「はあ?なにソレ。スカイハイはいつも助けを求める人のために祈ってるし、手を差し伸べてるわよ。どこが間違ってるって言うの?」

 それはあまりに正しいことだ。覆せない恒真式だ。だがそれは、彼がいつも通りの生活を繰り返しており、バーナビー以上の災難をその身に抱えていなければの話だろう――自嘲のように笑みが漏れた。キースの言うとおり、バーナビーはまだここがどこか理解できていないのかもしれない。夢と現実を混同して考えている。

「ほんっと感じ悪い!」
「まあまあ、ほっときなさいな。言葉には必ず、それなりのウラってモンがあるのよ」

 ね、ハンサム。含みのあるネイサンの視線が妙に居心地悪い。同意も否定もせず視線を明後日に流せば、暗い窓の向こうに赤黒い光の点滅をいくつも見つけた。立ち上がり、窓に近づく。

「……何ですか。あれ」

 窓を押し上げると、冷たい風が一気に流れ込んできて目や肌を刺す。顔をしかめつつ目を凝らせば、険しい顔の人々が松明を掲げていた。キースの私室は2階にあり、窓から見下ろすバーナビーたちの姿に気づいた者は居ないようだ。

「あ……!」
「しっかりなさい、ブルーローズ」

 聖歌がまばらに止まった。不穏なざわめきがバーナビーたちの居る小さな部屋にまで伝わってくる。青い顔でよろめいたカリーナを支えるネイサンが、ふと眉根を寄せた。

「火だわ……」

 まるでネイサンの言葉に呼応するかのように、寒さではなく息苦しさと生ぬるさで視界が煙り始める。木材が火に食まれる不快な匂いが鼻先にちらついた。暖炉で薪が消費される匂いとは明らかに違う。

「居るかい!?」

 バタバタと慌しい足音を引き連れてドアを開け放ったのは、先程出て行ったばかりのキースだ。カリーナの両腕を勇気付けるように掴み、容赦なく冷気を取り入れる窓の外を注意深く眺めている。

「スカイハイ、どうしよう……!外に……!見たことある奴が居る……私を追ってきたんだ……!」
「あの人々だけじゃない。どうやら囲まれているようだ」
「火もかけられたみたい。ついにここも標的になったのね……」

 外からは魔女に裁きをという叫びが次第に大きく、空気を歪めて荒々しく輪になっていく。状況から判断するに、カリーナを魔女として執拗に追ってきた連中が、その事情をこの町の人間に話したのだろう。この教会の動向を怪しく思っていた人々も居たに違いない。

「魔女、魔女って……ここに男だって居ると言うのに……」
「そんなこと言ってる場合ですか、貴方……」

 私のせいだとついに涙を浮かべ始めたカリーナに、キースは視線を合わせて微笑んだ。首を横に振るだけで彼女の主張を難なく否定してみせる。

「ブルーローズ。ファイヤーエンブレム。よく聞いてくれ、よーく」

 この教会には多くのNEXTが匿われていること。それだけでなく、修道士はもちろん、非力な孤児や病人も多く居ること。熱を持った人々に何を言っても、残念ながら耳を傾けてはくれないだろうこと。だから今は皆を連れて逃げてほしいということ。それらをキースは順序通りに説明した。まるで決まった祈りの文句をなぞるように。

「これは君たちにしかできない任務だ。君たちの補佐は彼がする。頼まれてくれるかい?」
「また……勝手に!何を言ってるんですか!」

 キースは表情から笑顔を消して姿勢を正した。バーナビーを正面から捉えているだけなのだが、それだけでどこか怒りさえ潜ませているように見える。バーナビーの目の中で彼は一人、その場に屹立していた。そういう一枚の絵のように。

「議論している暇は無い。この教会の中で最も強力なNEXTは我々だけだ。更に事態に即した対応を取ることができる人間……そう考えた時、私は君の他に適材を知らない」

 キースの言葉をそのまま受け止めることにしたらしいネイサンは早くも部屋を飛び出している。行くんだ、カリーナの背をキースが優しく押し出すが、彼女の心はネイサンのようにはいかないようだった。

「スカイハイはどうするの……?」

 数歩押し出されたが、立ち止まってキースを振り返っている。キースの表情は再び笑みに戻った。カリーナを見つめ、その視線をバーナビーに移し、やがて窓の外を眺める。

「誰かが呼んでいるんだ。私に……助けを求めている。それを見捨てて行くわけにはいかない」

 ネイサンが駆け足で部屋に戻って来て、思ったよりも火の回りが早いこと、火に行く手を阻まれた人々が残っていること、脱出できた者も町の人間と揉み合いになっていることを口早に告げる。視界を阻む煙がその報告を何よりも裏付けていた。

「……已むを得ない」

 キースが両手を勢い良く広げる。白いローブがばさりと翻った。白色の中央では二つの青い燐光が輝いている。それを悟った瞬間、バーナビーは能力を発動させていた。間髪を入れずに風が濃度を持って部屋に充満し、それが一気に解放される。ネイサンとカリーナは為す術も無く窓の外に放り出されてしまった。風圧に耐えながらなんとか悲鳴の先を追えば、キースは風で彼女たちを柔らかく着地させることも忘れていないようだった。強すぎる風圧で窓が割れ、ドアが吹き飛び、耳の真横でごうごうと絶え間なく風が鳴る。

「……だめだろう?そんなことで能力を使ってはだめだよ、バーナビー君」

 目を閉じ能力制御に神経を注いでいたらしいキースは、不意に目を開いて呟いた。今この瞬間、風は彼の意のままだ。ほんの小さな呟きでも狂いなくバーナビーの耳に届いてくる。君で最後の一人のようだ、彼はこともなげに続けた。空気抵抗を手がかりに人間と思しき対象をできるだけの注意を払って弾き出したという。

「普段は危険が伴うから絶対に避ける方法だ、安心してく……」
「風を止めてください!」

 バーナビーが叫べば、逆に風圧は一層強くなった。両腕を上げ顔にかかる風を申し訳程度に避けながらキースを睨みつける。彼は意地でも、バーナビーを救うべき誰かとしてこの部屋から弾き出そうとしている。

「最初に選ぶカードは何でもいいでしょう……!それは人それぞれだ!」
「バーナビー君、危険だ。そして力比べをしている場合じゃない」
「でも、最後まで残しておくカードは決まっているべきだ……!貴方は間違っている!」
「君こそ間違っている」

 突然風が止んだ。抗っていた圧力が突然霧散して体のバランスが崩れる。しまった、悔しく思いつつ合わせた目は青い。

「私は……君から失われるだけの誰かではないよ」

 体勢を立て直すよりも早く、再度突風が押し寄せてきた。言葉を重ねることも彼の表情を確かめることもできないまま窓の外に弾き出される。唐突に方向の変わった重力に肺が痙攣した。

「それに私の夢で君に何かあったら寝覚めが悪いじゃないか!」

 咄嗟に体が受身を取ろうとする。しかし想定した衝撃はもちろん訪れず、バーナビーはふわりと草原の上に降り立った。周囲は暗い。燃え盛っているはずの火がどこにも見当たらない。松明の灯ひとつすら見当たらなかった。それどころか人々の異様な熱気も消え去っていて、不安と動揺が暗がりの中で蠢いているだけだ。月明かりを反射する幾対もの瞳だけがかろうじて地上の光源となっている。

「どういう……ことなんだ……」

 キースの風が火をも薙ぎ払ったのだろう、ということは見当がつく。不可解なのは彼の言葉だ。ほぼ毎朝最悪の目覚めを強制され、毎晩就寝を躊躇させられているというのに、今更これがバーナビーの夢でないなどそんな馬鹿な話があるだろうか。これは間違いなくバーナビーの夢だ。

「スカイハイ!」

 不意にどこからかカリーナの声が上がり、視線を暗闇の中に泳がせる。この暗がりでは咄嗟に姿を認めることができないが、その声に導かれるようにして、人々のどよめきがやがて一点に集約して大きくなっていった。人々の視線を一身に受けたキースは窓から飛び出し、ふわりと教会の屋根に舞い上がって周囲の状況を確認しているようだ。

「天使だ……」

 誰かが声を震わせて呟く。そよ風が彼の周囲で外套になり、ローブとストールをはためかせている。その白と赤が目立つのは満月を背負っているせいだ。

「あの神父様は天使だったんだ……!」
「私たちは神のお怒りに触れたんだわ……」

 膝を折る者、さめざめと泣き出す者、聖書の一節を口ずさむ者と、先程までの熱気が嘘のように霧散してしまっている。ゆっくりと辺りに目を配っていたキースがふと片手を上げて微笑んだ。どよめきが更に大きくなる。

「違う、あれは……違う……」

 宗教画のように、幻想が人々に施しを与えているわけじゃない。
 僕を見つけて手を振っているんだ。

 ドン、轟音が空気を打った。

 突然のことに誰しも混乱のまま動けないでいる。爆発が起こったらしい、その事実さえ認識するのに数秒かけた。キースが能力を止めたことで風向きが変わり酸素が流入し、室内で舞い上がった粉塵に燻る炎が着火――粉塵爆発だ。呆然から我に返るまで、緊急事態においては永遠のような長さをかけてしまった。爆発の衝撃で屋根が崩落しており、キースの姿はそこに無い。鐘も共に炎に呑まれたのだろう、人々の悲鳴の中でゴーンゴーンと頭が割れるような不協和音をかき鳴らしている。

「……っスカイハイさん!」
「だめ!だめよ!巻き込まれる!」
「離してください!」
「アタシたちだって行きたいのよ!」

 ネイサンとカリーナに両腕を押さえられていた。いつの間に近くに居たのだろうか。暗闇の中気づけなかっただけで最初からかもしれない。無我夢中でそれを振りほどくと、カリーナが小さく悲鳴を上げて尻餅をついた。

「もうたくさんだ!こんな茶番も!火も!誰かを失うのも!いい加減にしろ!」

 崩落を免れた屋根の隅に黒い影がある。今にも炎に嚥下されそうな屋根の上に居ながら、不吉な色をはためかせるその姿はいかにも涼しげだ。思い切り地面を切って跳躍し、不安定な足場に無理やり着地した途端に能力が切れた。感情のまま熱で歪む視界の向こうを睨みつけ――硬直する。

「わたし、死神じゃない」

 黒衣のフードの下にあるのは、青白く月に照らされた少女の泣き顔だった。

-+=

ご不便をおかけしますが、コピー保護を行っています。