「おい城之内、本当に大丈夫なのかな……これ……」
モクバはそわそわと先ほどから遊戯の部屋の床に円を描いて歩き回っている。
「仕方ねーだろ。静香がそうしたいって言ったんだから!オレだって心配だよ!」
そしてその後を追ってぐるぐる歩き回っているのが城之内だ。学習机の椅子に腰掛けて眺めていると、とてつもなくシュールな図である。ただし本人たちは本気で心配しているのだろうから笑うのはこらえておいた。
「オレ結局何も言ってきてないんだけど……」
「マジかよ!?ヤベ……今すぐ海馬の家に殴り込みに行きたくなってきた……!」
「兄サマの怒りが鎮まんなかったらお前のせいだぞ遊戯!」
「ええっ!またボク?」
「だってお前、兄サマなら大丈夫って言っただろ!」
「言ったけど……」
「大丈夫だモクバ。静香は携帯持ってる。ついでにいつでも連絡して来いって言ってあるからな。その時は遊戯を盾に強行突破だ」
「またあ?」
「だって海馬、お前の言うことだったら聞きそうだし……」
そんなこと全然無いんだけどなあ、と思ったし口にもしたが、二人とも聞いてくれない。まだアテムが居る時のイメージが強いのだろうか。アテムは相手を納得させるだけの力と舌と信頼とを持っていた。遊戯がそこに追いつけるのはまだまだ遠そうだ。無理して追う気もないが。
「まあ心配しても仕方ないと思うし……連絡来るまでこっちはこっちでやろうよ」
「そ、それもそうだな」
相変わらずそわそわした雰囲気からは脱しきれていなかったが、ひとまずモクバと城之内は動きを止めた。そのせいでついに笑ってしまう。結構この二人似てるかも。
「じゃあ今日だけ!今日だけトックベツにお前ら二人の弟になってやるからな!喜べよ!」
「かっわいくねー弟だな」
「念願の弟で嬉しいよ!」