お兄ちゃんと一人っ子
遊戯が城之内と二人で海馬と話すことがあると言うから、仕方なくモクバが静香を駅まで送ってやることにした。車でも良かったが、静香が断った上にモクバも歩きたい気分だったので徒歩で夕暮れを歩く。
しかし城之内は何か言いたげなところを遊戯に抑えられていたような気もする。一体なんだったのだろうか。
「モクバくん、今日どうだった?」
「おう……まあまあかな。城之内、結構やるじゃん」
「そうでしょ!」
嬉しそうな静香に苦笑する。ちょっと強引なところもあったし、ゲンコツが痛い時もあったのだが、総括すると楽しかったにしかならないのだ。
「そっちは?」
「うん。海馬さん、いい人だったよ。優しかった」
「そ……本当か?」
「うん」
「良かった……」
兄は何かと誤解されやすい人だから、他ならぬ静香にもそう思われなくて良かった。静香には兄の良いところをちゃんと知っていて欲しかったのだ。同じように兄を持つ弟妹として。
「なんだかうちのお兄ちゃんにちょっと似てるかなって思ったよ」
「そうかなあ?兄サマ、そう言ったら怒ったろ?」
「うん、一緒にするなって」
いつもはヒヤヒヤしそうな言葉も、今日は笑って聞ける。一日互いの兄弟のところに居ただけなのに、もっと親しくなれた気分だ。
「でもまた来たいって言ったら、いいって言ってもらえたから。これでモクバくんの家にも遊びに行けるよね」
「お前……!ひょっとして、それでこんなこと言ったのか?」
「だって、友達だから。友達に嫌な気分させてまでお邪魔したくないもん」
照れくさいのか嬉しいのか恥ずかしいのか分からなかったが、今が夕方で良かったと思った。きっと顔が赤くなっているだろう。
「お前、そそっかしいけど、結構いい奴だよな」
「そう?だとしたら、お兄ちゃんの妹だからかな」