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弟妹同盟。(モクバ+静香+ほんのり表海)



「頼む遊戯っ!一緒に謝りに行ってくれ!」
「えーっ、ボクぅ?」

 城之内や静香と一緒にやって来たものの、すっかり心ここにあらずなモクバに事情を聞いてみたらこれだ。モクバは世界の終わりを見たような顔で遊戯に迫ってくる。城之内が元凶のようなものだと思うが、確かに城之内と行けば火に油を注ぎ更に風を送って炎を煽る結果になりかねない。

「いいっていいって、あんな面白くねー奴。ノリが悪いってキレ返してやりゃいいんだよ」
「城之内はいいよな……何も知らねーから……」
「あーもー悪かったって。アイス喰うか?アイス」
「要らねえよ!」

 正直なところ縁起でもないイタズラをした自業自得と思わないでもないが、ここまで荒れていると逆に可哀想になってくる。どうしようかと困っていると、静香がすっと立ち上がった。

「私も一緒に行くね」
「お前……」
「私が面白がったから海馬さん怒らせちゃったんだと思うから……」

 一緒に謝ろ?と首を傾げる静香に、モクバは煮えきらぬ表情だ。だが、何かを振り切ったのか首を横に振った。

「いいよ。本当はオレが一番悪いって分かってんだ。オレがちゃんと一人で謝る。遊戯も悪かったな」
「モクバくん……」
「ちょっとだけ、ちょっとだけだけどな。羨ましいって思っちゃったんだぜぃ。……それだけで充分、オレ兄サマにヒドイことしたんだと思う」

 すっかりしょげかえったモクバがトボトボと家を出ようとする。声をかけようとすると、静香に止められた。思いつめたような表情で一緒に行ってあげてください、と懇願される。

「モクバくん……お兄ちゃんのことが大好きなんです……だから……」

 そんなことは、遊戯だって知っているのだ。だが、だからこそどうしても渋ってしまう。

「帰ってきたか。フン、余計な奴も付いてきているぞ。玄関前でゴミは落とさんか」
「兄サマ……」
「ゴミって……ひどいよ海馬くん。ゴミに負けるつもり?」
「ハッ、よく言ったな遊戯。デッキを構えろ」

 遊戯と会話を構成していく海馬を、モクバはどうすればいいか困って見ている。海馬くんも意地悪だなと思いつつ、遊戯はこっそりモクバの肩を叩いた。海馬がデッキ片手にこちらまで歩いて来る。

「あのっ兄サマ、」
「それで?」
「え……」
「怪我は無いんだな?」
「う、うん……」
「ならもういい」

 海馬は興味の無い様子を繕っている様子だが、遊戯にはそれが逆におかしかった。堪えきれなくなったモクバが兄に突進し、何度も謝罪を繰り返している。それを微笑ましく思った。

(いいなー……ボクも兄弟、ほしいなあ……)

 モクバが兄のことを慕っているのは知っている。だが、いやだからこそ、海馬は怒ってなんかいないということが最初から分かっていた。だから、わざわざ遊戯が行く必要なんてなかったのだ。

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