「静香……!」
泣き出さんばかりの城之内が微笑ましくて背中をぽんぽん叩いた。しかし以前からのモクバや静香の言動から見て、お互いに好きなのかなあと思っていたのだが。遊戯の早とちりだっただろうか。わざと先に二人を返したことで、結果的に二人の友情を深めたことになって良かったが。
「さあもう帰ろうよ。なんか覗き見してるみたいで嫌だし……」
「いや、オレはギリギリまで残るぜ!一瞬海馬かと思って焦ったが、モクバでも色々心配だからな!まだ早い!まだ早いぞ静香!」
「何言ってんだよ……」
「とにかく帰るんなら一人で帰れよな!」
「いや……ボクは……」
もう一人の兄バカに、無言の圧力とすごく遠まわしな口ぶりの併せ技で頼まれてしまっているのである。彼の弟の見守りを。手ぶらでは帰れそうにないのだ。
「ああー静香がどこの誰とも知らない奴に掻っ攫われるかと思うとー!」
「さっき君、自分でまだ早いって言ってたじゃないか……。皆いずれは結婚したり何だりするんだからさー」
「いや海馬とか絶対残りモン決定だぜアレ。オレが女だったら一番近寄りたくねーよ」
「分かんないよ、社長さんだし!それに……」
海馬くんが残ったらボクがもらうんだもんね。という心の中は、口に出さずに胸の奥に大事に仕舞い込んでおいた。