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2→7



2 am – 1

「ああ、大丈夫です」

 その言葉には決して突き放すような音階は含まれていない。少なくとも、アレンの耳はそう聞いた。お小言を受けて慌てて片づけや家事分担に取りかかるアレンを呆れながら笑うような気安さだった、と思う。そう信じたかっただけかもしれない。振り返るとちょっと自信がない。

「この……五年? 同じようなことを聞いてきたので」

 わざわざ数えなくても分かっているくせに、長い指がパタリ、パタリ丁寧に広げられていく。そして愉快そうに口角がぐっと上がる。

「もう充分です」

 何も答えられないアレンを更に鼻で笑った夏準は、話は終わりと言いたいのかあっさり体の向きを変えた。そしてリビングのドアを閉める前にひらひらと手を振る。まるでファンの子に振りまくサービスのように。

「おやすみなさい、アレン」

 パタリ、ドアが閉じるとリビングに静寂が戻った。ピ、ピ、ピ……気に入っている目覚まし時計がデジタルの秒針を規則正しく進める音だけがする。時刻は二時過ぎ。アレンは呆然とソファの前に突っ立っていた。

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