表海

三本のマッチ

 街灯が穏やかな色の光の輪を作って、後から後から降り注ぐ白い雪を照らしている。見える世界のほとんどは白い。はあ、ついたため息の色まで白だ。分厚いコートに手を突っ込んで、マフラーに埋めた赤い鼻をすする。

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非修辞技巧

いつも遊戯は、言葉にできない、意味の分からないものを海馬に残していく。  退屈で緩慢な時間をほんの小さな机の上で潰しながら、海馬は経壇から目をそらした。「学校」という存在が海馬にいくつかの付加価値をも

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相対性理論

 夏=暑い  つーっとあごを伝う汗を緩慢な動作で拭った。つい漏れたため息までもが熱っぽい。座る安っぽくてボロなベンチもどこか熱を持っているようだ。目に映る全てのものが暑さにやられて気だるげだった。高い

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群青

 思えば確かに、どこか様子はおかしかったかもしれなかった。  世界への夢に向けてまずアメリカへ旅立ったにもかかわらず、何故この学校に籍を残していたのか。そう問われれば、『気まぐれ』と答えるしかない。そ

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花葬

花葬(ほうせん花)  自転車のペダルが昼間より軽い気がするのは何故だろう。こっそり布団から抜け出した時は心臓が潰れるかと思ったが、抜け出してみれば何てことない。祖父も祖母も遊戯にまるで気づくことなく眠

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感染経路

感染経路  何でこんなにドキドキするんだろう。  窓から冬の気配がじんわりと伝わってきている。今日は朝から霧のような小雨が降っていて、外の空気はすっかり色を抜かれてしまったようだ。ぼんやり見上げる窓越

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