年年歳歳花相似たり  フロム・トーキョー 2008-07-172023-05-12 息を切らして少年が駆けてくる。それを見下ろす桜まで辿り着くと、幹に手を当てて立ち止まった。もう昼下がりだからか、春の近い寒空の下でも少年の息は白く曇らない。 「はあー……」 ほぼ言葉に近い大きなたRead More
非修辞技巧  フロム・トーキョー 2008-07-092023-05-12いつも遊戯は、言葉にできない、意味の分からないものを海馬に残していく。 退屈で緩慢な時間をほんの小さな机の上で潰しながら、海馬は経壇から目をそらした。「学校」という存在が海馬にいくつかの付加価値をもRead More
相対性理論  フロム・トーキョー 2008-06-192023-05-12 夏=暑い つーっとあごを伝う汗を緩慢な動作で拭った。つい漏れたため息までもが熱っぽい。座る安っぽくてボロなベンチもどこか熱を持っているようだ。目に映る全てのものが暑さにやられて気だるげだった。高いRead More
群青  フロム・トーキョー 2008-06-042023-05-12 思えば確かに、どこか様子はおかしかったかもしれなかった。 世界への夢に向けてまずアメリカへ旅立ったにもかかわらず、何故この学校に籍を残していたのか。そう問われれば、『気まぐれ』と答えるしかない。そRead More
ビジー・デイズ  フロム・トーキョー 2008-04-102023-05-12 チチチ、とどこかのんびりとした鳥の声と、それに似たクスクスという優しい笑い声が耳に入った。そうっと閉じていた目を押し上げると、爽やかな朝の光が飛び込んできて思わず目を細める。むくりと起き上がって目をRead More
抜けるような  フロム・トーキョー 2008-03-182023-05-12「御伽くん、おはよう!」 明るい声に驚いて思わず背筋を伸ばす。声のした方へ振り返れば、淡く光る朝の青空によく似合う笑顔がそこにあった。瞳を少し見開いてしばらく考え、それから御伽は笑顔を作る。多少ぎこRead More
花葬  フロム・トーキョー 2008-02-292023-05-12花葬(ほうせん花) 自転車のペダルが昼間より軽い気がするのは何故だろう。こっそり布団から抜け出した時は心臓が潰れるかと思ったが、抜け出してみれば何てことない。祖父も祖母も遊戯にまるで気づくことなく眠Read More
感染経路  フロム・トーキョー 2008-02-222024-05-04感染経路 何でこんなにドキドキするんだろう。 窓から冬の気配がじんわりと伝わってきている。今日は朝から霧のような小雨が降っていて、外の空気はすっかり色を抜かれてしまったようだ。ぼんやり見上げる窓越Read More