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ワン・アンド・オンリー・ユー



「おかっ……あれーっ?」
「お帰りなさいませ、修也さん……あら」
「キーパーのお兄ちゃんだー!」

 トタトタと真っ先に玄関に飛び出してきた夕香と、その後をゆっくり追いかけてきたフクとが同時に目を丸める。円堂は照れた風にまずフクに挨拶をした。それから夕香と同じ視線までしゃがみ込む。

「久しぶりだな!夕香ちゃん!」
「うん!」
「すっかり元気になったみたいだな」
「うん!今日もね、なわとびして、かけっこして……サッカーもしたよ!」
「そっか。将来、豪炎寺よりすごい選手になるかもな!」

 円堂に頭を撫でられた夕香は、照れながらも嬉しそうに笑っている。だが豪炎寺から見ると、一人っ子の円堂の手はどこかぎこちなく、それがおかしかった。

「ほら、上がるなら上がれ」
「う、うん。お邪魔します……」
「フクさん、今日円堂泊まっていくって」
「あらまあ、それは。どうぞいらっしゃい」

 フクに優しく微笑まれた円堂は、少し気まずそうな笑みだ。単に遊びに来たわけでなく、家出の末だからだろうか。夕香が隣をぴょんぴょん飛び跳ねながらついて歩いている。

「今日はお兄ちゃんもいるし、キーパーのお兄ちゃんもいるのっ?」
「ああ、そうだよ」
「ほんとっ!すごいね!ね、お兄ちゃん!」
「ああ、キーパーのお兄ちゃんにいっぱい遊んでもらえ」
「うんっ!」

 え、という顔を円堂がする前に夕香がその背中に飛びついた。さすがのバランス力で倒れはしなかったが、突然のことに円堂はどうしていいか分からないようだった。その顔をフクと一緒に笑う。

「うー、笑うなよ……。よしっ夕香ちゃんおんぶだ!」
「うん!おんぶー!」

 一旦しゃがんで、夕香を軽々背負った円堂に、夕香は楽しそうな笑い声を上げている。お兄さんが二人になったみたいですね、フクも愉快げだ。円堂を見ていると、なかなか放っておけないと言うべきか、つい世話を焼きたくなってしまうが、こうしていると夕香の世話もサマになっていた。元々面倒見のいい性格ではあるしな、と一人納得する。いつも以上にわいわいと騒がしいリビングに苦笑しながら入った。

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