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夜をあるく人びと (十星)



 十代は、不思議だ。気づいたら心の中にいるのに、目の前からはきれいさっぱり居なくなる。なんとなく、今度こそもう会えないような予感がした。しかし遊星は遊戯の言うように、信じて待つことは得意だ。また会えたらいい、そう思ってはいた。

「――供え物……?」
「あっ、やっと起きたか!」
「ごめんね遊星くん、またこんな時間にー」

 しかし、起きてみたら腹筋に缶チューハイやビールが並べられているとは、予想だにしなかった。

「あっ起きないでね!こぼれるから!」
「起きないから先に始めてたぜ!」

 しかも開封済みらしい。座布団だけでなくテーブルに使われるとは。慌てて床の上に缶を移動し始めた尊敬するデュエリストたちを見て、さすがの遊星も何故最初からそうしなかったのかと感じずにはいられなかった。

「遊戯さん、十代さん……」
「うらやましいだろ、今日は遊戯さんに誘われたんだぜ!」
「えへへ、来ちゃった!」
「来ちゃった、で来れていいんでしょうか……」

 もちろん嬉しいですが、と急いで付け加えるとわっと歓声が上がった。――このデュエリストたち、もうだいぶ出来上がっている。

「もう、来ないのかと思っていました」
「どうしてさ。会いたくても会えないことなんていっぱいあるのに、会えるのに会わないなんて馬鹿みたいじゃないか」
「そうだそうだ!」

 さすが遊戯さん、だなんて騒いでいる十代は、最後に会った時のことなんてすっかり忘れてしまっているみたいだ。考えすぎの自分が悪いのかどうなのか。遊星はすっかり脱力した。そしてほっと安堵している自分に気づく。

 どっちがいいかなんて、そんなの決まっている。

「さ!決闘だ!」
「よっし、デュエルデュエル!」

 笑顔で缶ビールを渡されたので、ぐいと呷ってデッキを取り出す。体の奥から湧き出るような熱は、アルコールなどのせいではない。

「遊戯さんや十代さんだって、きっと誰かの、仲間たちの星として輝いていると思います」

 まるで意外というように、遊戯と十代が目を瞬いて遊星を見つめた。それがなんだか心地良い。ひとつ口元で笑う。胸元に手を当てた。

「オレの胸の中で、光っているように」

 夢か現実か、そんなことはどうでもよくて、再び巡り合えた奇跡をしっかりと味わわなければ損だ。考えるのは後でもいい、遊星の時間はまだまだたっぷりあって、未来はどこまでも広がっている。

「遊星くん……」
「よせよ、嬉しいじゃんか。遊戯さん!遊星にちゅーしていいですかっ!」
「いいよいいよ。やっちゃえー!」
「え、いや、待っ」

 相手が酔っ払いだということを一瞬でも失念したのが遊星の敗因だったか。とにかく、遊星は明日も一人で目覚めるだろう。でもきっと、また会いたいと思っていることだけは確かだ。

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