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Meteor /メテオ



※ 2012-08-19 / SCC関西18 / A5コピー / 20P / 兎空

 夜風がスーツの裾を乱暴に弄んで駆け去って行った。今はその温度を肌で感じることはできない。だがきっと、コンクリートの街に滞留した夏の熱気を帯びているのだろう。

 ゴールドステージにあるポセイドンライン本社ビルの頂上から見下ろせば、光の海を眼下に納めることができる。光の気配がキースの喉元まで迫って輝いていた。まるで星空を見下ろしているような気分だ。幾星層のシュテルンビルトの平和のために、今日も地上の星空に滑り出そうとしている。

 深呼吸、体を適度の緊張に浸して能力を発動させる。風の流れが変わるのを入念に確かめた。本来、人間は空を自由に飛ぶことはできない。その法則からキース一人外れていることを、能力を発動するその一瞬でいつも再認識する。

「よし」

 ぐらりと体を夜風に任せる。空気抵抗をクッションに、重力からひやりと離れて浮き上がった。その後はジェットパックの推進力に頼りながら高層ビルの隙間に直線を結んでいくだけだ。今日もスカイハイは星の海に溺れることなく、ヒーローの役目を全うする。

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